文学酩酊日誌
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文学酩酊日誌<2012年1月22日>
奥田英朗著「町長選挙」「純平、考え直せ」
前者は精神科の伊良部先生シリーズ。先にアニメやドラマで見てしまった話もありますが(舞台以外はほぼチェックしていて自分でも驚く)、面白かった。私も先生に診て欲しい…けど注射はちょっと…。
後者はやくざの鉄砲玉になった純平の話。三日間が濃縮されているというか、密着していて読んでいて楽しかった。最期の薬でラリるのはちょっと出来すぎていた気がする。それはさておき、純平の行動は一人の考えだから仕方ないかな、とも思う。西尾のジイサンが不良ぶっていて大変可愛い。

横溝正史著「八つ墓村」「夜の黒豹」「華やかな野獣」
八つ墓村は前々から読みたいと思っていたので、ようやっと読めました。津山三十三人殺しに関する話は冒頭だけで、あとは冒険(探検)小説だった。もっと殺人の部分が読みたい。華やかな野獣に収録された井戸の話は金田一耕助の出番が少なくて悲しい上に、犬神家と話が似ているような…。どの話もみんな「戦後」の話なので、戦争さえなければなぁと思う。

夢野久作著「ドグラ・マグラ(上下)」+漫画版「ドグラ・マグラ」
一度読みたいと思っていた本。本文に出てくる「キチガイ地獄外道祭文」のリズム感が非常に面白い。「声に出して読みたい日本語」には収録されていないんだろうか。とはいえ、あまり人に絶賛すると「この人、精神に異常を…」と思われてしまいそうだけど…。解説に書かれているよう「分かったつもり」や「面白かったつもり」で、実は読み終わったつもりなのかも…。後半は分かりかけた真相がまた分からなくなって大変面白かった。若林博士がいい人なのか正木博士がいい人なのか、もう一度検証しつつ読みたい。冒頭の人体解剖がえげつなくてあんまり読みたくないですが。漫画版は話の筋をつかむのに最適。でもところどころ大幅にカットされているのが惜しい(祭文も削られてる)。まあ長いから仕方ないか。

菜摘ひかる著「えっち主義」
著者自身の赤裸々なあれこれのエッセイ。著書自身の過去の話を読むと、気分が沈みます…。

団鬼六著「悦楽王」
自伝にしてははしょられている部分がかなり多く(いつの間にか結婚していた、子供がいたなど)他の部分も詳しく読みたい。雑誌が出来るまで、そして倒産するまでが流れ。たこ八郎も渥美清もいい人でよかった。

平安寿子著「くうねるところすむところ」
男に惚れて転職した主人公サイドと新米女社長サイドで交互になって面白かった。いいところで終わっているのも余韻がいい感じ。家を建てるなら優しい施主になりたい。

清水義範著「幸福の軛」
まさか殺人事件の犯人が…。翔子のこれからを思うととてもやるせない。カウンセラー怖い。主人公はカウンセラーとして「孤独が」「愛が」といっていても、結局は自分がそれを求めていたんだなあと思うとつらい。

西加奈子著「しずく」「こうふく みどりの」
前者の最終話に出てくる母が、自分の母ととても似ているので読んでいて泣けてきた。猫の話も面白くて、切ない。後者のはこてこての関西弁ににじむ情を感じる。読み終えた後にもう一冊(「こうふく あかの」)があると書かれているので、こっちも読まねば。

文学酩酊日誌<2012年2月26日>
中山可穂著「サイゴン・タンゴ・カフェ」
話の最後にモチーフになったタイトルが出てくるので、ぜひ聞いてみたい。猫の話が好き。

戸梶圭太著「ツーカイ!金剛地くん」「グルーヴ17」
表紙の謎が最終話で解けてよかったです。暴力的なのでちょっときつかった。
後者は悪意に満ちているので「そういう話」と思いながら楽しく読んだら、自殺部分がちょっと…。テクノは好きだけど詳しく知らないんで、わかるようになったら読み直してみたい。

重松清著「小学五年生」
相変わらず「少年」の描写がうまい。転校した少年の話と親友が転校してしまった少年の話が好き。

桃井アロム著「ゲイ恋リアル」
読むものがなかったから、と軽い気持ちで読書。かなりあけすけに「ゲイの事情」「ゲイの背景」を語られているので読みやすかった。

後藤みわ子著「Hは人のためならず」「Hは寝て待て」「Hよければすべてよし」
対象年齢がヤングのせいか、キャラが個性的。「さあ、Hしましょう」と言ってのける京が可愛いものの、別にそういう展開はないのでちょっとがっかり。最終巻はHというよりTが多い。3巻で終わっているので残念。もっと読みたい。

団鬼六著「枯木に花が」
老人が女子大生を愛人にして云々。後半急に展開が変わって、最後には宗教が絡みだしてわけがわからなくなりました。残念。

群よう子著「二人の彼」
相変わらず面白いんですが主人公はみんな回りのせいでトホホってなってる。起承転結の転で終わっている感じがして、もうちょっと長いのが読みたい。

花村萬月著「愛情」
作家の情さんにかかわるいろんな女の話。月30万もらっててまだなお金を盗む女の話が嫌い。

水野敬也著「大金星」
「夢をかなえるゾウ」とおんなじ形っぽいものの、続きが気になる。読んでいて非常に面白かった。九州から出てきた春男がとっても魅力的。

森見登美彦著「太陽の塔」
京都に住んでいるので、地名が出てくるたび嬉しかった。でも話の内容はというと、よくわからなくて肌に合いませんでした。ゴキブリのエピソードが気持ち悪い。

平安寿子著「コーヒーもう一杯」「あなたにもできる悪いこと」
小説なんだけど、経営云々の話なので「もしドラ」みたいな感じがした。アドバイスくれていた人が実は自分のことを腹で笑ってたという部分が、読んでいて悲しかった。そもそも主人公が売り言葉に買い言葉で始めてしまい、昔からやりたがってたというのも(母や叔母が本文中で言っていたものの)あまり感じなかった。
後者は小銭稼ぎにしかみれず、もうちょっと大金を手にしてほしかった。話し合いで解決しているから仕方ないかな。

草野たき著「ハチミツドロップス」
手抜きで部室でだらだらやっているところに、張り切った一年生たちがやってきてしまって居場所がなくなるとか、付き合った男子に振られるとか。中学生時代に「付き合った!」「別れた!」というのを経験していない上、主人公が「がんばってる私アピール」をしすぎるので共感できませんでした。唯一面白かったのは元彼に「私本当は友達とかいやだったんだよ!」と話したところくらい。

鯨統一郎著「オレンジの季節」
サラリーマンが主夫になって、家族のつながりができて〜という平和の章で終わっていればよかったのに。殺戮の章は「実はおろちの血が〜」など、とってつけたような感じがして蛇足でした。

町田純著「閣下!」「閣下!2」
閣下とジャックのやり取りが大変面白い。口調が癖にナッテしまう。話はシンプルで、いろんなコトに対する批判や皮肉。閣下の「バカ…」の呟きが好き。3はないのかな。
深沢美潮著「IQ探偵ムーそして、彼女はやってきた。」
風の又三郎よろしく風とともに出てくる夢羽。クールなのでとっつきにくいけれど、その分主人公がしゃべるので話もよく読めた。機会があればシリーズ全巻読みたい。

宮下恵茉著「ロストガールズ」
さくらとあんずの家族が毒親(頭がよくなくちゃ駄目、うちの子らしいうちの子じゃないと駄目としつけられているあたり)で読んでいてつらかった。

芦辺拓著月「蝕姫のキス」
とある物事に対して「やれやれ」とか言い出す主人公に好感が持てず、楽しめずに読み終えました。推理に図がついているのがよかったくらい。そういえば推理小説だった。

有沢佳映著「アナザー修学旅行」
そういえば修学旅行のときに「行かない(行けない)生徒」がいたなあと思い出した。3日間に密着して書かれているので、1日目と3日目で心境が変わっているのがいい。保健室の引きこもりが教室に来てよかった。

岡田潤著「こども電車」
9時に寝ると夢の国行きの電車に乗れるという設定。やたらでしゃばってくる美咲が好きじゃなかったので、後半の言動はなんだか納得できた。クラスの担任が生徒の名前を呼び捨てにしているのはどうかと思う。せめて「愛さん」とか…。子供が主役だからとはいえオトナが薄っぺらい。

文学酩酊日誌<2012年3月17日> 森見登美彦著「恋文の技術」
手紙形式で話が進む。読むと文通したくなりました。男の人ってみんなオ○パ○が好きなんですね!守田の将来に幸あれ。

横溝正史著「貸しボート十三号」
相変わらず金田一耕助が飄々としていてよかった。先日読んだ本の中に「防御率最低の金田一耕助」といわれてしまっていて、笑った。

荻原浩著「幸せになる百通りの方法」
各話のテーマが「最近のもの(節電、歴女など)」で、その近い感じが面白かった。

藤野千夜著「ベジタブルハイツ物語」
文章が砕けすぎていて(〜というか、の多用あたり)、あまり肌に合わなかった。全体的にどうも、肩透かし。ベジタブルはいつの由来は各部屋に野菜の名前がついているからでした。

加納朋子著「コッペリア」
人形に恋をした、人形に似た人間に恋をしたのがなかなか面白い。登場人物はシンプルなものの、名前をフルネームで覚えておかないと誰がどれかすぐ見失ってしまいました。

松尾スズキ,河井克夫著「お婆ちゃん!それ偶然だろうけどリーゼントになってるよ!!」
タイトルが好きで、一度読みたいと思っていた本。どの話だったか、爆笑しました。どれだったか思い出せない。この話に出てきた松尾嫁が面白いんですが、離婚された様子。

中島らも著「休みの国」
話の中に出てきた、次回作の構想や今までの著書のちょこっとした裏話が読めてよかった。もっと読みたかったな…。

三浦しをん著「むかしのはなし」 短編と時間の流れの関係が大変よかった。猿の昔話は知らなかったので詳しく読みたい。
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