文学酩酊日誌<2009年1月19日> 土屋賢二+森博嗣「人間は考えるFになる」 二人の対談と土屋教授初めてのミステリー小説が一本。ちなみに一番面白かったのは教授のあとがき。どうも森の方の「エッセィ」とか「トランシーバ」などに見る単語の表記が気になって仕方ない。苦手だ。 五味太郎著「絵本を作る」 たくさん絵本を作ってきた五味さんの、今までとこの先。文章が「楽しく楽なことしかしちゃいけないんだよ。ね、かんたんでしょ」と気さくに話しかけてきてくれているので、心が気楽になります。私も絵本作ってみたいな。 辻仁成著「人は思い出にのみ嫉妬する」 栞の恋人戸田さんは、自殺した前の恋人と自分を比べているのではないか?あの子だったらこう返事するんじゃないか?と嫉妬を募らせてしまう。その結果二人の中はギクシャクで壊れてしまうので、つらかった。でもどろどろしているので面白かったです。三角関係のあたりが…。 瀬尾まいこ著「幸福な食卓」 独自のルールを作っている家族と、その主人公と恋の話、兄の恋の話。人が死ぬ話はベタなのに泣いてしまった。映画化したらしいのでぜひ見たい。大浦君が余りにいきいきして格好いいので、その分だけ苦しくなる。 群ようこ著「財布のつぶやき」 ずいぶんこの人のエッセイを読んできたので、内容は安定した面白みがある。生活って大変…。 畠中恵著「いっちばん」 若旦那と妖のドタバタ。春画を与えられて顔が真っ赤になって死に掛ける若旦那が見てみたい。屏風のぞきが好きです。 文学酩酊日誌<2009年2月24日> 瀬尾まいこ著「優しい音楽」 「突然彼女ができたのは彼女の死んだ兄に僕が似ていたから」「不倫相手の子供を預かることになった」「彼女がホームレスを拾ってきた」の3本。どうもあまりぐっと来なかった。前回の「幸福な食卓」はあんなに感動したのに…。 星新一著「かぼちゃの馬車」 相変わらずの面白さ。安心して読める短さ。 東山彰良著「ジョニー・ザ・ラビット」 マフィアのボスに飼われていた影響で言動がハードボイルドな探偵ウサギのジョニー。ちょっといいメスウサギを見つけるとすぐのしかかっては「このラビッチめ!」とかいって腰を振る(いくときはいつも「ああ…うう…おお…うっ!」で、2回使われてるのが面白かった)。ただ、その設定が面白かっただけで話の大筋はあんまり覚えてません。 文学酩酊日誌<2009年3月18日> 井上荒野著「雉猫心中」 これ心中してませんよ。期待して損した。不倫したカップルの男側女側に分けて話が書いてある。あの時実はこういうことを考えていた、というのが分かるのは面白いですがそれ以外は全く琴線に来ませんでした。エロくもない。 瀬尾まいこ著「戸村飯店青春100連発」 面白かった。こてこての大阪がいやで都会へ出た兄と、そんな兄を嫌いつつもやはり中のいい弟。とても面白かった。でもやりたいことが分からないけど一応大学生になるという選択肢は賛成できません。なんて身分だ! 平安寿子著「恋愛嫌い」 これもとても面白かった。この人の本は要チェックしていこうと思う。恋人というものがいない女3人を主人公にしたいろんな短編。一人(+ペット)がいれば大丈夫!生きていける!でも結婚したい。 文学酩酊日誌<2009年4月9日> 本谷有希子著「グ、ア、ム」 すごく面白かった。母、長女、次女の3人で2泊3日のグアム旅行へ行くだけなんですけど、方言丸出しの会話、テンポがよかった。あと、うさぎの「おもち」意外全く名前が出てこないのが魅力的(娘は母をおかんと呼ぶ)。飛行機の中でビーフかチキンか聞かれて、弾みでおかんが菩薩様のように光るくだりに爆笑。 新堂冬樹著「枕女優」 裏芸能界の話。トップ目指して整形したり枕仕事したり。仕事を極めても結局欲しいものは空虚なものだった、という終わり方が暗くて、良かった。ただの成功話じゃないあたりも。 柴崎友香著「星のしるし」 何気ない日常をグダグダ話しただけの物語。最後まで読んでも面白くなかった。事件が起こらないんだもの。主人公がしたのは占いしてもらったりマッサージに行ったりしただけ(あと祖父が死んだ)。それだけ。それ以上でもない。 誉田哲也著「武士道シックスティーン」 これも面白かった。剣道全く分からないけど…。宮本武蔵好きで、剣道の試合も真剣勝負だ!とかいう信念を持つ磯山さんと、日本舞踊やっててまだ剣道歴の浅い西荻二人が大変可愛い。これ、ラストが良かったなあ。映像化しそうなんだけどなあ。 文学酩酊日誌<2009年5月19日> 群ようこ著「なたぎり三人女」 独身女3人が集まって何やかんや。一話目は攻略本片手に三人が必死にSFCのマザー2をやるので読んでいて面白かった。 米原万理著「旅行者の食卓」 大変お腹のすくエッセイ。雑学的な内容もあるので、読んでいてためになりました。 桂望実著「平等ゲーム」 何でも平等、将来安泰の島に育った主人公が、いわゆる外(本州)でもまれて成長する話。平等に見えた裏には実は賄賂とか悪いことがあって、住人はそれを好むから主人公の正義は負けてしまう。そんなもんだろうと思う。 荻原浩著「さよなら、そしてこんにちは」 最初の話は生死の話ですが、その他はコミカルでした。どうも浮いてる。 山田風太郎著「風山房風呂焚き唄」 旅行と別荘について集まったエッセイ。飄々とした作者像が見えて、ほほえましい。 文学酩酊日誌<2009年6月6日> 荻原浩著「ちょいな人々」「愛しの座敷わらし」 ずいぶんとほのぼのした人情話(登場人物の日常)を書いているので、驚いた。前者は短編集で、庭を巡って争う話といじめ電話相談室の話が好き。「愛しの座敷わらし」はとても可愛かった。中に出てくる方言の「メエネエドオモッテダッキャ、メッケメケ(見えないと思っているようだけど見つけた、という感じ)」に笑ってしまった。 重松清著「とんび」 最初の二話はほのぼのしているのに、途中から父子家庭話になるのがつらい。でもこのお父さんが幸せ第一に考えていて、素敵だと思った。文体が「ヤスさん、驚いた」などで、いつもと違うので新鮮。 鈴木清剛著「消滅飛行機雲」 いろんなカップルの、その一瞬を描写した話。「麦酒店のアイドル」が一番幸せそうでほほえましい。 山崎ナオコーラ著「理論と感性は相反しない」 何だか惹かれるタイトルだったので読書。一話目で出てきた人物が他の短編にも登場するのでなかなか面白かった。「架空のバンドバイオグラフィー」はギャグマンガ日和みたいなシュールさでした。セカンドアルバム「あの子が全然酒飲んでないから、ここはワリカンにはしない」欲しいです。 長谷川摂子著「とんぼの目玉」 言葉についてもあれこれエッセイ。柳田国男はずいぶんとうるさい人だったんだな、と分かる。日本語は歴史が深い。 文学酩酊日誌<2009年6月23日> 東直己著「探偵は吹雪の果てに」「駆けてきた少女」 シリーズ物。一作目ではないので読むんじゃなかったとちょっと後悔(シリーズ物の欠点は回を重ねるごとに主要人物の説明が省略されてしまうところ)。でも前者の吹雪編は面白かった。主人公の俺とタクシーの運転手との会話「で、そのササキに行ったんですけど、私が欲しいサイズの…」「あ!?」「サイズがですね」「あ!?サイズ!?」「ええ」「サイズ!?…ズーパンの!?」「ええ」「あ!?」「はい?」「ズーパンの、サイズ!?」「ええ」「サイズが、なしたの!?」「ですから、サイズが」(以下略)には爆笑しました。 「駆けてきた少女」はもうひとつ。ミッション失敗してるのが残念。 平安寿子著「グッドラックららばい」 突然母が家を出て行ったので、父と娘二人で何とか暮らしていく成長記。いわゆるだめんずに恋する姉積子、金が大事な妹の立子、節約家の父、そしてあちらこちら振り回されて長年家を空けた母。どうもみんなばらばらで家族小説として求めていたものが違った。 小手鞠るい著「猫の形をした幸福」 ともに再婚同士の二人が結婚して、猫を飼う話。結婚して子どもに恵まれなかったら私も猫を飼おうと思った。猫のおかげで救われるもの、安らぐものがあるのはいいな。その分だけ最後の別れが切なかった。 ねじめ正一著「我、食に本気なり」 食べ物にまつわるあれこれのエッセイ。こういうのは読むと必ずお腹が減る。昭和の思い出の食べ物っていうのは、ほんと美味しそう。 荻原浩著「千年樹」 一本のクスノキを後にした、さまざまな人と事件の短編。てっきり長編かと思っていたので肩透かし。でもホラーやほのぼのなラブロマンスがあってよかった。 |