文学酩酊日誌
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文学酩酊日誌<2008年7月16日>
森見登美彦著「有頂天家族」
人間に化ける狸の起こすファンタジー。狸の師匠天狗に攫われて能力開発された人間の弁天がなんともいい感じ。面白かった。ところどころ文章が硬いのが味わい深くて好き。

シェイクスピア著「夏の夜の夢・あらし」
ガラスの仮面の劇中劇で一番好きなのが「夏の夜の夢」なので、読んでみました。漫画に出てきたセリフがそのまま書いてあったりしたのでさくさく読める。それにしてもシェイクスピアって文学なのか。シナリオにしか見えないんだけど…とかいうと怒られそう。

蜂谷涼著「ちぎり屋」
駆け落ちしてきた北海道で居酒屋経営中。焦がれ舟の章がいい感じ。途中、でしゃばってて嫌な感じだったタセが実はいい子だったあたりも好き。

三浦しをん著「風が強く吹いている」
寄せ集め10人で駅伝に出よう!祝舞台化。「まほろ〜」のときといい今回といい、どうも男が美化してあるなぁと思ったら、作者の性質によるものなんですね…。オタクだけど美形とか、そういうの。でもそんなところも踏まえてこの本は良かった。仲間がいるってすばらしいな。

文学酩酊日誌<2008年7月29日>
中島らも、わかぎえふ著「じんかくのふいっち」「じんかくのふいっち2」
同じテーマで二人のエッセイ。4コマもついてて面白かったです。
「人間、何になりたいとかかんになりたいとか、言うのは勝手だ。これはタダだ。しかし、身もふたもない言い方をすれば、なれるもんにしかならん、と、こういうことですよ」は至極名言だと思う、心にずしんと着ました。

米原万理著「真昼の星空」
海外生活を送ってきた通訳者のエッセイ。異文化コミュニケーション。海外は住みたくないわぁ。

重松清著「ブランケット・キャッツ」
2泊3日で貸し出しされる猫と、それを借りる人たちの話。複雑なものを汚いところも含めてしっかり描写できるって毎度すごいと思う。ところで本当にこんな猫レンタルあるんだろか。あっても借りませんが(見るのはいいけれど近くにいたくない)。

文学酩酊日誌<2008年8月10日>
群よう子著「トラちゃん」「膝小僧の神様」
前者は動物とのふれあいエッセイ。飼っていたインコの「肥溜めに落ちたけど生存、足を踏まれたけど生存、猫に腹を引き裂かれても生存」は笑いました。
「膝小僧の〜」は小学5年を主人公にした日常話。ハッピーエンドではない話が多いのがまた面白い。

中島らも著「水に似た感情」
この人のエッセイを読んでいたおかげで、出てくる人物やエピソードの原型が何となく分かる。悟りの末に開けた感じでよかった。

筒井康隆著「文学部唯野教授」「文学部唯野教授のサブ・テキスト」
難しい!文学のあれこれをいろいろ知らないので話についていくのがやっと。出直してきます。

星新一著「だれかさんの悪夢」
とある話のオチが読めた。珍しかった。

中島たい子「この人と結婚するかも」
男の人と会うたびに「あ、結婚するかも」などと妄想してしまう女の話。結局結婚しない。ちょっと複雑。

永倉萬治著「あぁ、結婚」
嫁も子供もいるのに浮気するとか、燃えるような恋をした相手が実は人妻だったとか、どうも男心が分からない。

それと「さよなら絶望先生」を11から13まで。私…臼井君しか見えないの!かなりの色男に見えてきたの!ああ!アニメの声もナイスでした。

文学酩酊日誌<2008年9月24日>
奥田英朗著「家日和」
家があるっていいな。最終話「妻と玄米御飯」が本当臭い感じになっているのが面白かった。

新津きよみ著「わたしはここにいる、と呟く」
読んだ後にもやもやする短編。主人公が二人、途中で変わるのが多いなと思った。探し物上手のママとなくした結婚指輪のオチが、唯一すっきりした。

山本甲士著「どろ」
読後感がものすごく悪い。途中でやめようと思ったけれどつい読んでしまった自分が悔しい。一つのきっかけでいがみ合って、隣人と復讐合戦する話です。何と言うか、関西弁ってひどいな…。

柳美里著「雨と夢のあとに」
結局パパは人間じゃなかったのか…。ドラマは全く見てなかったのですが、主題歌が好きでした。

首藤瓜於著「事故係生稲昇太の多感」
まっすぐな正義のために働く昇太が大変可愛い。これ、映像化したらいいのに。

西澤保彦著「異邦人」
23年前にタイムスリップしてしまった自分が、父の死を防ぐためにいろいろ。トリックはあんまり考えたりせずに読みました。義理の姉(自分は養子)の恋人の女の子がいい感じでした。

桜庭一樹著「私の男」
ライトノベル出身だけあって、どうも、文章の言い回しが気になる。時系列がころころ変わるのでなかなか読みでがありました。結局近親相姦で、二人とも同じ罪を抱えてるんだなー。

重松清著「僕たちのミシシッピ・リバー 季節風 夏」
夏を舞台にした短編集。読んだ後がすっきりするので安心して読める。これ、他の季節編もあるんでしょうか。あったら楽しみ。

あさのあつこ著「十二の嘘と十二の真実」
短い話を12×2の24編。ツルっていう女がなんなのか知りたくて一気に読みました。飢え怖いけどカニバリズムも怖い。

吉田修一著「さよなら渓谷」
「かなこ」の正体が隣の女か暮らしている女のどちらか、どきどきしながら読みました。レイプよくない。因果応報、一生罪に苦しまれてろ!

角田光代著「ドラママチ」
一本目の夫が浮気した女をどうするか分からない話を筆頭に、どうもなじめなかった。それなりの魅力あ感じるんだけども、主人公の年齢と私自身が離れている(気がする)ので…。

文学酩酊日誌<2008年10月10日>
山崎ナオコーラ著「浮世でランチ」
人付き合いが下手くそな今と、中学時代(ほとんど黒歴史に近い感じの)を織り交ぜて徒然を語った感じ。自分達で宗教を考えて崇拝しよう!の痛さはなんだろう。主人公が女の子好き(というかタカソウが好き)のくだりは好きです。

浅田次郎著「霧笛荘夜話」
纏足の老婆が古アパートの空き部屋を紹介。一つの話に出てきた二人目が次の話で主人公になっているのが面白い。4話がすごくいい。亡くなったおねえちゃんの代わりを隣人のオカマがやってくれるんですが、そのあたりが暖かくていい。

鯨統一郎著「鬼のすべて」
民俗にまつわる鬼をキーにして殺人の謎を解く。これ、頭考えさせて読むのが嫌だったのでオチを先に読みました。すみません。でも犯人が分かっているおかげですらすら読めました。鬼がね…好きなんでね…。

長嶋有著「ぼくは落ち着きがない」「泣かない女はいない」
前者が作者自ら「ぼくは勉強ができない(山田詠美著)に続くシリーズ!」といっていたので期待して読んだのですが、ち、違う!秀美君並に格好いい男の子がいないじゃないか!普通の文科系高校生日記じゃあないか!後者は普通のOLの日常を淡々と書いてて、読んでて眠たくなった。

文学酩酊日誌<2008年10月25日>
青山七恵著「やさしいため息」
ふらふら放浪する弟と再会、そしてその友達に恋っぽいものをするものの、結局上手く行かないのが大変歯がゆかった。

真田コジマ著「アンクレット・タワー」
鉄塔に登った少女を、そのテレビ中継を見て何かきっかけを起こす三組の話。夫に浮気をさせて嫉妬に狂う妻の話が嫌いです。でも5年前に別れた彼女と再会するサラリーマンの話は良かった。もう一組は別に…。登場人物名がカナなので、携帯小説みたいでした。

花村萬月著「ぢん・ぢん・ぢん」
いやぁ読みでがあった。664p上下二段組み。所用があって電車に乗っている最中ずっと読んでました。大まかな話は童貞が醜女の中年処女とくんずほぐれつして他の女のヒモになっていろいろ。後半の全身整形失敗が読んでいて痛々しかった。まぶたの裏に注射針がっ。

京極夏彦著「ルー=ガルー」
舞台は近未来、主役は14歳。所々の設定が好きになれないまま読みました(途中でやめればよかった)。自分のこと「ぼく」って呼ぶ女の子嫌いです。最後まで読んでも話がいまいちのみこめなかった。とりあえず麗猫可愛い。

文学酩酊日誌<2008年11月8日>
津村記久子著「ミュージック・ブレス・ユー!!」
高校3年生、就職はする気ないし大学いけるほど実力ないし、大好きなパンクロックがあればそれでいい。そんな感じの主人公アザミがぐだぐだ過ごす話。洋楽知らないのでさっぱりなところもありましたが、こだわりが好き。この話は宙ぶらりんだった18歳の頃に読みたかった。青春がうらやましい。

群ようこ著「ヒヨコの猫またぎ」
エッセイ。どれ読んでも面白いので安心して読めます。

中島らも+いしいしんじ著「その辺の問題」
いしいしんじがらもさんと対談形式で作った共著。しょっちゅうマリファナが〜とかハシシが〜とかいけないお薬の話が出てくるので、いいんだろうか。それにしてもらもさんは長生きしてほしかった。毎回思う。

酒井順子著「食の細道」「黒いマナー」
エッセイ。文章が「〜です、〜ます」なのでお上品でした。あんこ嫌いなので分からないんですが、こしあんと粒あんってそんなにこじれるほど派閥が別れてるんですか。「こしあんは御前汁で粒あんは田舎汁ですのオホホ」等の作者の主張が大変面白かったです。

花村萬月著「風転」
また読んじゃった。分厚くて、登場人物がしっかりしていて非常に読み応えがある。でも内容はバイオレンスでエロティック。素敵。ヤクザの鉄男といざこざで父を殺したヒカルを中心にその母、恋人たちがあちこち。とりわけ母が好きです。浮気してないのに家を追い出され、じゃあ淫奔になってやるわ!と堕ちちゃうのが…。行きずりの男に「お母さん」と呼ばせて、自分は息子の名前を読んでいたという場面がお気に入り。最後の鉄男が頬ずりするところは、感動でしびれました。

永嶋恵美著「厄災」
妊婦連続殺人事件、犯人は未成年、その弁護士が夫…。主人公の周りが敵だらけで孤立するのがなんとも悲しかった。しかしその夫に好意を寄せていた女との対決場面は、良かったです。

市川拓司著「弘海‐息子が海に還る朝」
冒頭が変な書き方のせいか、てっきり息子死んでるのかと思って、いつ死ぬのかとどきどきしてたのですが裏切られました。彼は実は新人類だったのですって…そんなファンタジーな…。期待はずれでした。最後まで読んだけど。

文学酩酊日誌<2008年11月25日>
酒井順子著「容姿の時代」「私は美人」
前回読んだエッセイが面白かったので、また読書。語り口が面白いので、また読もう。

白石一文著「この世の全部を敵に回して」
非常に惹かれるタイトルと表紙。内容は「死ぬって何?」「生きるって何?」「愛って何?」など、わりと辛らつな感じ。読んでてなかなか複雑でした。あんまり話は分かってません。数年後にまた読みたい。

重松清著「ツバメ記念日 季節風・春」
表題作「ツバメ記念日」を初めいろいろ。人間関係の細かさ、主人公によって違う目線ならではの考え方の書き方が味わい深い。他の季節も楽しみ。

花村萬月著「少年曲馬団」
主人公惟朔の成長記。明治生まれの厳格な父に英才教育をされたがゆえに先生からのけ者にされる小学時代も好きですが、惟朔の回りの子ども達との関係が読んでて面白かった。片山さん可愛い。

曽野綾子著「非常識家族」
キャラ立ちしている祖父を始めとする、家族でつづる落語っぽいお話。オチの部分がくすっとなります。

平安寿子著「こっちへお入り」
たまたま落語を見に行って、自分も落語をかじるという話。本文中にいろんな落語の話題が出てくるもついていけず…。でも実際聞いたり知りたくなる。とても面白い話でした。

文学酩酊日誌<2008年12月9日>
武良布枝著「ゲゲゲの女房」
水木しげる夫人のエッセイ。売れるまでずっと一緒に頑張ったこと、旦那の人気が出てから家庭内(夫婦愛)がギクシャクして家出したけどすぐ帰ってきた日のことなど…。文章が上品で、こういう嫁さんになりたいです。

関口尚著「パコと魔法の絵本」
泣いた泣いた。泣かせる設定だと知りながらボロボロ泣いた。これの深いテーマは「許す」だと思う。しかしながら、仕事一筋の「クソじじい」がある出来事で心をすんなり入れ替えてしまったのはちょっと抵抗がある。もうちょっと重松清あたりの老人描写をしてほしい(偉そう)。
とりあえず今は映画のDVD化が楽しみで仕方ありません。早くみたい。

雫井脩介著「犯罪小説家」
自分の小説が映画化するので、作者が監督に振り回されてしまう話。この監督のキャラが非常にうっとおしいので読むのを何度止めようかと思ったか。あと、作者は結局犯人でした。勝ち逃げかぁ。

伊坂幸太郎著「モダンタイムス」
とある単語を検索すると、恐ろしい目にあってしまう。その設定と魅力的な台詞回しの登場人物が大変いきいきしてました。途中から超能力が話題になって、主人公もそうなるのは、さめたけど。結局「ゴールデンスランバー」と同じで結局主人公は世の中に敗北(見てみぬフリ)を選択。スカッとするのが読みたい。

文学酩酊日誌<2008年12月18日>
城山三郎著「そうか、もう君はいないのか」
先に嫁をなくした作者の、彼女との馴れ初めから終わりまでの回想。一目惚れした嫁に「妖精のようだ!」と惜しみなく愛情注いだ文章を綴っているので、その溺愛ぶりに涙が出そうになる。

鯨統一郎著「タイムスリップ森鴎外」
殺されかけた森鴎外(60歳)が現代にやってくる。そういう話。現代になじんで金髪でラップも歌うしブレイクダンスもするモリリンが大変面白かったです。犯人が太宰治じゃなくて良かった。

重松清著「少しだけ欠けた月 季節風・秋」
珍しく何も解決しない短編が数点あったのでびっくりした。表題作の離婚が決定した最後の日の話など。そんな中で、相撲少年の話はすっきりしました。

有川浩「ラブコメ今昔」
共学高校のノリで自衛隊員の恋愛話がいくつか。取材してしっかり描いているのはいいのだけれど、あとがきで「話聞いてる最中この人をネタにしてました☆あはっ」みたいな感じの文章があったのがどうも感じ悪い。好きじゃない。角川スニーカー文庫でやれ、と思った。登場人物がいきいきしているだけにもったいない。

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